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とにかく酷い雨だった。
朝の天気予報では紛れもなく晴れだと、予報を告げるお姉さんは笑顔で言っていた事を今でも覚えている。
だが結果は雨。午前から徐々に雲行きが変わっていくのを不安に感じていたが、正解だったようだ。
お陰で傘を忘れてしまった。家までの帰り道、弁当と筆箱だけが入っている鞄を傘代わり頭に被せ一目散に走る。
両足が水飛沫で濡れる。徐々に冷たい感触が肌を刺激し、表情が苦渋に変わっていった。
「雨だなんて聞いてないぞ、本当に。寒いっつーの、この野郎」
独り、小さく呟く。標的は灰色の空、雨雲の表情、雨の音色。
とにかく、今日の高峰 宗矢(たかみね そうや)の気分は最悪だった。
雨宿りはせずに自宅へと走る。幸い学校までの距離は歩いて約十五分。ずぶ濡れになる事は変わらないが、雨が止む気配は一向にない。灰色の空が鼠色に変化していたのが証拠と言える。
度々通り掛かる傘を差した主婦達に奇異の眼差しを向けられながらも、高峰宗矢は羞恥で熱くなる顔を抑える事は出来なかった。
「く、くっそがあああぁぁぁああ!!」
羞恥を振り払うかのように、叫ぶ。憎たらしい雨よ、覚えとけ。高峰宗矢は呪うように呟く。
取り敢えず、今は全力で走るのみ……だがふと、ある物が視界に入る。
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