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電柱の影にポツンと置かれた段ボール箱。雨によって箱に染みのように濡れた跡が広がっており、独特の固さは無くなっていると見るだけで分かる。
ただそれだけならいい。誰かが棄てたのだろう、と気にかかる事もない。
「…………」
足を止め、段ボール箱を見つめる。
不覚にも閉じられたままの段ボール箱の中身を想像してしまい、眉を顰める。
雨、隠されたように置かれた段ボール、閉じられたまま……即ち、蓋を傘代わりにして雨を凌いでいるような。
「……まさかな」
不安は疑心へと変わる。
雨により冷やされた身体を温める事も出来ず、餌も無く飢えを凌ぐ動物がいる訳がない。
猫とか。犬とか。犬とか。猫とか。
プルプルと震えて拾ってくれる人を待っている―――、
「…………よっと」
鞄を頭に乗せたまま蓋を恐る恐る開いて見る。
「―――ンな訳ないよなぁ」
予想通り。予想していた事が通った。胸につっかえた不安を吐き出す。
案の定、段ボール箱には何も入っていなかった。
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