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大学の講義の帰り道、教授達の駐車場でカ細い猫の鳴き声がした。
おのずと鳴き声の方に意識が向かう。
今にも発車しそうなエンジンかかった車の下で子猫が鳴いていた。
車の持ち主である教授は先にエアコンだけかけて、門脇の自動販売機で飲み物を購入しているようだ。
―――危ないな。
あの年老いた教授は子猫に気がつかず、発進してしまうかもしれない。
「ホラ、コッチ、来い。」
呼びかけても子猫は固まって動こうとしない。
仕方なく駐車場に腹ばいになって車高の低い車の下を覗き込み、精一杯手を伸ばす。
一度引っ掻かれはしたが、根気よく「おいで。」と手を伸ばし続けたら、やっと子猫を捕まえる事ができた。
腕の中でにゃぁと鳴いて震えながら、身体を擦り付けて愛想をする子猫を俺は手放せなくなる。
うッ・・・
頼むそんな可愛い仕草で俺を翻弄しないでくれ。
すがるような大きな目で俺を捉えないでくれ。
この場で見捨てたら、俺は極悪人になってしまうじゃないか。
どうしよう…俺の家は飼う事できないのに。
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