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「……悠、きろ……起……よ」
声が聞こえて俺は渋々目を覚ます。
「夢か……
嫌なもん思い出したな」
ぼそっと呟き、辺りを見渡すと坂口亮太がそこにはいた。俺を起こしてくれたようだ。
この男は友人であり、アイドル顔負けのイケメンでありながらも女好きでモテない。
ましてや、この高校の女は全て把握した……いわゆる変態?
そんな事を考えている阿呆な俺に亮太が唐突に、しかも呆れ顔で口を開く。
「お前、いつまで寝てるの?もう放課後だぞ?」
「へっ!?」
声が裏返り、我ながら馬鹿な声が出たなぁ……
「お前、5時間目からずっと爆睡だね」
亮太はヤレヤレと言うような仕草をしている。
「ちょっと殴っていい?」
「な、何で殴られにゃならん!」
「いや、夢かなって思って」
「自分の頬つねったらいいでしょ!」
亮太が必死に訴えてくる。
それでこそいじられキャラ!
「いや、痛いじゃん」
「俺も痛いから!」
「じゃあ帰るか」
先に教室を出る。もちろん亮太は置いて。
「待てって!」
亮太をいじり、帰路へつく。
これが俺の日常、昔からの親友亮太以外とは極力話さないように休み時間でさえ寝てる事が多いのだ。
昔に色々あって今ではもう周りの奴らと絡むような事はしない、絶対。
生返事するか無視かの二択だけだ。
そうすれば誰も寄ってこない、あぁこれでいい。俺に関わってくる者好きなんていないだろう。
とは言いながらも、入学当時から若干二名が俺へと猛烈アピールしているのだが。
奴らは後々登場することだろう。
「そういえば俺たちもついに入学して1週間だね」
突然亮太が伸びをしながら口を開く。
「……」
「……」
「何か言えよ!悲しいでしょ!」
「あぁ、俺に言ってたのか。気づかなかった……」
「今ここにお前しかいないだろ!」
「それもそうだな」
「悠、やっばり高校で友達作らないのか?寄ってくる人……みんな拒絶してさ」
「いいんだ。これ以上手にある物が手のひらからこぼれ落ちるていく事が恐いんだ……」
「そっか。俺に出来る事があるなら何でもするから」
俺はそう言う亮太に『あぁ……』というような生返事しか出来なかった。
「でも、もうすぐテストって事かぁ……」
ふいに亮太の口から漏れた言葉。
テスト、亮太がテス……
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