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不覚にも赤を取ってしまった俺はもう砂漠で一人オアシスを探すかのごとく学校への道を歩いていた。
「あぁ~。せっかくのGWに寝れないってもう普通の学生の半分損しちまってるぜ」
そこまでひどくないとオモウヨー
「うっせぇ、ナレーション!」
端から見たら独り言しゃべってるキチガイっていらぬ偏見を持たれそうなので自重自重。
嫌々ながらも学校への距離は縮む訳でー
学校へ無事到着。
「ふぅ。勉強ってやる意味ないよなぁ」
だとか学生なら一度は考える考えてもキリがない事を呟き桜並木を見渡す。
そう、この桜高校は名前にもあるようにとても立派な桜がそびえ立っている。
「桜か……。何感慨ふけってんだ俺は」
そんな俺の視線の先には同じく桜を見渡す一人の少女がいた。
髪は黒髪の腰付近までのストレートで顔はとても整って……
視線に気づいたのか、その少女は突然俺に話しかけてきた。
「……どうかしましたか?」
「いや、えっ、桜綺麗だね」
とっさに浮かんだのはそれだけだった。
ボキャ貧ですぴませーん。
「そうだね。 まぁ桜高校ですから」
風に舞っている桜を見ながら目を細め呟いてくる。
「まぁ、俺の美しさには惜しくも敵わないがな」
女は一瞬キョトンとし、
「ふふっ、おかしな人っ」
「笑うとは失礼な!じゃ補習行ってくる」
淡白に言う。
「あっ……うん。 あの、お名前は?」
「ん、下野悠。いずれ世界中の人から慕われる事になるぞ。」
もちろん冗談のつもりで言ったつもりだが、
「そんな凄い人なんですか!?」
真剣に驚いてる少女。何というか可愛い。モテるであろう良い顔立ちを抜いたとしても。
「冗談だよ。 お前の名前は?」
「私は神谷風花と言います。プリティだと思いません?」
「………」
はいそうですか。
黙って校舎へ向かおうとすると、
「無視しないでくださいよ!」
「悪い悪い。あまりの辛口ジョークについてけなかった」
「むぅ。失礼です。必死で下野君に合わせたつもりなんだけど」
キーンコーンカーンコーン
「やべっ、じゃあな」
俺は神谷風花という自称プリティな奴に手を振り走り出す。
「あっ、うん」
それが俺と神谷の出会い。何の奇抜性も色気も皆無。
が、これだけですら俺にしては不自然だった。他人と普通に会話をしたという事実。
俺はここから変わり始めたんだろうか、無意識の内に。
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