誰でもない人

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「お帰りなさいませ」 「あぁ」 義務的な出迎えを受けつつ未だ己を見ようともしない相手に、また思う 己より子供の、己の正室。父にも母にも愛され里を恋しがる 「おい、母上は」 「小次郎様とご一緒かと」 「そうか」 父の気持ちがわからないわけではない。習慣だ。あくまでも古来からの習いなのだ 「小十郎は?」 「多分すぐに…」 「政宗様」 「あぁ、帰ったぜ」 「お帰りなさいませ」 ほっと息が吐けた 「お帰りなさい」 すぐ後ろから喜多も温もりある笑みを向けてくれる それに笑みを返しそのまま愛の横を通りすぎ、自室へと歩んだ 「相変わらず仲悪いね、二人」 「気にはしていますが、なかなか」 「俺が何とかしてあげようか」 「それは…」 「止めろ、成実。お前には関係無い」
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