438人が本棚に入れています
本棚に追加
「うっっっっ!!!!!」
イリスは、背中から刀のようなもので斬りつけられた。
「っっ…………!!!」
痛みとともに血が舞い踊る。袈裟に斬られた背中には破れた服と抉られた肉。
骨までは達していないが、それは十分致命傷と言えるものだった。
幸いなことに、斬り付けた相手が、武器を持っただけで強くなった気でいる素人であったことと、得物が生粋の日本刀などではなく、至るところに錆びや刃こぼれのあるなまくらであったことは幸運だ。
しかるべき使い手と、磨き抜かれた真剣であったならば、その一撃でイリスは絶命していた。
が、そう甘いものでもない。
「──────」
イリスの意識は薄れ、草でできた地面に倒れ伏す。
倒れた先は、思いの他冷たいものだった。状況は秒を重ねる毎に最悪の結末へと進んでいく。
すなわち、イリスの死である。
常人ならば五回は死亡するダメージを受け、そこから更に致命傷と言える銃撃と斬撃を受けた。
中川 康助を守るため、彼に恩を返すために戦い続けた仔猫は力なく横たわり、急速に意識を手放していく。
最初のコメントを投稿しよう!