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「イリス!!!!!!!」
力の限り仔猫の名を呼ぶ。しかし車は猛スピードで遠ざかり、赤々と噴煙を巻き上げるアジトから離れていく。
「イリス!!!!イリス!!!!!!」
狂ったように名を呼ぶ。車の後部座席から見える景色は段々と小さくなっていくばかりで、無慈悲に駆ける車は康助とイリスの距離を容赦なく引き離していく。
「イリス……くっそぉ……イリスーーー!!!!!!!!!」
康助は、わかっていた。普段は考えていなかったことだが。何となくこうなることを、無意識よりも更に曖昧な感覚で、予期していた。
イリスは、命に関する罪は命でしか償えないと言った。康助でさえ今はそう思う。だが、命を救ってもらった恩は、命を懸けて守ることには繋がらない。
人間のどのような行いも、命で代行したり引き換えにしたりはできない。命は一つで、有限だからこそ光り輝き尊いのだ。
要するに、あのバカ猫は、まだそのあたりを勘違いしてやがるということだ……!
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