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敵の第二波は、これまでの有象無象と違ってそこそこ鍛えられた特殊部隊くずれだったのだ。構えからの初撃が記憶にある動きだったので見て対応できたが、今のイリスにとっては苛烈な試練であることに代わりはない。代わる代わる繰り出される刃物に寒気を覚えながらもイリスは反撃し、第二波を辛くも退ける。
一呼吸だけおいて休もうとしたイリスだが、途端。何の前触れもなく。
イリスの胸から血が吹き出す。
イリスの身体を、肺を貫通したそれは、イリスの背後から背中を貫き、肺に六ミリメートルの穴を空け鎖骨の辺りから飛び出して行った。
「が……!!ぐう……!!」
喉の奥から込み上げてくる不快感と鉄の味を抑えることができず、イリスの口から鮮血が滴り落ちる。
「ごふっ……!!」
それは銃弾だった。いかに鍛え練り上げられた筋肉でも、銃弾の貫通力の前では意味を成さない。
銃弾は幸い急所を外れ貫通したが、それでも致命傷に近いダメージは十分にあった。
何より、満身創痍で気が抜けたところで撃ち抜かれたのだ。いくらイリスでも、次から次に湧いてくるゴキブリのような敵の襲撃全てに対応するなどできるはずがない。
「うっ……!」
耐えきれず倒れこみそうになる足を、従来の人間であれば卒倒するような痛みを、イリスは根性だけでねじ伏せ、倒れることを拒んだ。
だって、自分が今倒れたら、この敵達は康助のもとへ迫る。
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