『小助、いざ参る。』

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「おはよう、小助。」     突然後ろから声を掛けられ、ビックリしてつまづいた。 聞き慣れた鈴のような声の持ち主は、この屋敷の一人娘、椿だ。     「椿様ッ、おはようございます。」     はにかんだ様子の小助に、椿はクスッと笑う。 体勢を立て直して小助もハハッと笑った。     「今日も朝早くからご苦労様。私これから散歩に行くのだけれど、小助もどう?」     椿は、日傘を持ち小助の腕をつかんだ。 小助は、照れながら首を横に振る。     「俺、まだお仕事ありますし…旦那様に怒られますよ。」     椿はそれを聞いて、口をとがらせた。それから、あ!と思い付いたように目を輝かせる。     「お父様には、私から言うわ。私の護衛だと言えばいいから。」     いい考えね。と椿は傘を小助に渡して、屋敷の奥に消えた。残された小助は、後から自分に降りかかる先輩使用人達の怒りに怯えながら、椿の下駄を用意した。     「やれやれ…、怒られるのは俺なんだから…。」     少し涙を滲ませながら、そうつぶやいた。
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