1.彼女はライオン

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 朝食のかぐわしい香りが僕の食指をこれでもかとくすぐるので、夢電波美少女の件は後回しにし、朝食を食べる事にした。    米が立つ純白ご飯に、ワカメが泳ぐ味噌汁、そして塩鮭。  近年、食の魚離れが進んで居るが。僕は魚が好きだ。忌野清志郎より好きだし、森鴎外より好きだ。どちらも僕の手には触れられないが、塩鮭は手を伸ばせば届く所が好きだ。    今日は平日なのだから、朝食を終えたら当然、学校に向かう。  申し遅れたが、僕は学生だ。        家を出ると、雲一つ無い青空が広がって居る。梅雨のせいで、昨日まで散々泣きわめいていた空も、遂に涙の元が枯れたらしい。   「おはよう!あきら!」 「おはよう、りか」    門の前には、女の子然とした女の子が立っている。  幼なじみの、冴木 里佳だ。腰まで伸びた長い髪、控え目なようで活発な性格。なにより料理上手な彼女が塩鮭より好きだ。    塩鮭と比べるのはどうかという意見を、聞き入れる予定は無い。   「その子は?」  りかの夢の中まで常識的な所も、僕は好感が持てる。   「それが……」 「私はライオン、よろしくね。りか」    ライオンのは僕を押しのけ、りかに接近した。 「ライオン?面白い名前ね」    りかは笑っている、口に手を当てる仕草も実に女の子らしい。    ライオンも笑って居るが、りかとは違う。目が笑って居ない。
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