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嫌な予感が僕の頭をよぎったが、どこかにつっかえて上手く形にならない。
「よろしくねライオンさん。
行きましょう、遅刻しちゃうわ」
もやが掛かったままの思考はとりあえず。リカの提案に従い、僕たちは学校へと向かった。
朝の登校風景も特に珍しい物じゃない。顔見知り以上なら挨拶を交わす。話題があれば、その場でだべる。そんなものだ。
「おはよう、あきら、リカ、ライオン」
夢のご都合主義に浸食された奴がここにも居る。僕の数少ない友人A、カミヤだ。
「おはようカミヤ」僕。
「おはようカミヤ君」リカ。
「おはよう」ライオン。
勿論ライオンの目は笑って居ない。
「昨日は結局買えなかったよ」
カミヤは顔は良い、眼鏡をかけて居るのを差し引いても。いや、むしろ眼鏡すらモテアイテムに昇華させているに違いない。そんなカミヤだから女にはそれなりにモテる。
でも、酷い二次元オタクだったりするカミヤは、告白されても。
「三次元の恋人なんかいらん」というめちゃくちゃな切り返しで相手を振ったりする猛者なので、恋人はいない。
訂正。
二次元にしか、恋人はいない。(嫁の方が適切かもしれない)
「残念だったねカミヤ君」
リカがフォローに回るが、カミヤはそんなにメンタルは弱くないので、僕は追撃する事にした。
「アマゾンとかヤホーとかで買えよ」
「分かってないぞあきら!
あの店限定の初回翠たそフィギュアが欲しかったんだ、俺は!」
「知!る!か!」
このやりとりが、毎朝の僕たちの挨拶だった。ライオンを除いて。
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