1.彼女はライオン

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 嫌な予感が僕の頭をよぎったが、どこかにつっかえて上手く形にならない。   「よろしくねライオンさん。 行きましょう、遅刻しちゃうわ」    もやが掛かったままの思考はとりあえず。リカの提案に従い、僕たちは学校へと向かった。        朝の登校風景も特に珍しい物じゃない。顔見知り以上なら挨拶を交わす。話題があれば、その場でだべる。そんなものだ。   「おはよう、あきら、リカ、ライオン」    夢のご都合主義に浸食された奴がここにも居る。僕の数少ない友人A、カミヤだ。   「おはようカミヤ」僕。 「おはようカミヤ君」リカ。 「おはよう」ライオン。    勿論ライオンの目は笑って居ない。   「昨日は結局買えなかったよ」    カミヤは顔は良い、眼鏡をかけて居るのを差し引いても。いや、むしろ眼鏡すらモテアイテムに昇華させているに違いない。そんなカミヤだから女にはそれなりにモテる。    でも、酷い二次元オタクだったりするカミヤは、告白されても。 「三次元の恋人なんかいらん」というめちゃくちゃな切り返しで相手を振ったりする猛者なので、恋人はいない。      訂正。  二次元にしか、恋人はいない。(嫁の方が適切かもしれない)   「残念だったねカミヤ君」  リカがフォローに回るが、カミヤはそんなにメンタルは弱くないので、僕は追撃する事にした。   「アマゾンとかヤホーとかで買えよ」   「分かってないぞあきら! あの店限定の初回翠たそフィギュアが欲しかったんだ、俺は!」   「知!る!か!」  このやりとりが、毎朝の僕たちの挨拶だった。ライオンを除いて。
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