1.彼女はライオン

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「なんて事をしてくれたんだ君は!」    顔が熱くなり、僕は立ち上がってライオンに目線を合わせ、睨んだ。僕が睨んだからって迫力が有るかは知らないが、コイツはわざとやったに違いないんだ。   「わざとじゃないわ!」    わざとらしい言い訳をして、泣きそうな芝居をするライオン。僕はそんなライオンが嫌いになった。今まではただの変な夢電波美少女だったが、今は酢豚のパイナップルよりも嫌いな存在だ。   「あきら、止めて、お弁当位で怒らないで!」    リカが僕の腕を掴み止めようとする。リカは僕が悪いというのか?悪いのはライオンじゃないか!   「あきら、お前らしく無いぞ」      僕は、カミヤの言葉で我に帰った。  リカが僕を止めたのは、いつもの僕じゃ無かったからだ。なのに僕はリカに酷い事を考えてしまった。リカは何も悪くないのに。   「ごめん、リカ」 「ううん、私は良いの。 お弁当はまた作れば良いじゃない。 明日はもっと凄いお弁当作ってくるから」    本当にリカは優しい女の子だ。   「駄目よ、あきらのお弁当は私が作るんだから」    抑揚の無い声がやけにハッキリと耳に入った。ライオンの声だ。   「だからリカ、あなたは明日、自分の分だけ作れば良いわ」    喜怒哀楽、人間の表情はほとんどの場合どれかの状態に居るのだけれど。今のライオンの表情は、その全てを微塵も感じさせない顔をしていた。   「そ……そう、分かったわ、ライオンさん」    リカが頷くと、ライオンの顔が溶け、笑顔になる。   「ごめんね、リカ」    やっぱりコイツはわざとやったんだ。本当に大っ嫌いだ。
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