プロローグ

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5月の生暖かい深夜。 人気のなくなった通りを賀川菜美子(かがわなみこ)は逃げる様に走っていた。 何かが自分を追ってきているのはわかる、しかしそれ何なのかは、賀川には判らなかった。 賀川は思った。 追ってくる物がまだ人であったらどんなによかったことか。 しかしチラッと見えた自分を追ってくるモノは人の類ではなかった。 (何よ! あたしが何をしたってのよ!) “それ”は急に現われた。 古い友人達と飲んだ帰りに別れたあと、偶然、ヒールがとれてバランスを崩した時、喉元に鋭い痛みが走った。 触れて見ると手のひらはべっとりと血にまみれている。 賀川は逃げろという動物的本能でその場から逃げだして今に至っていた。
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