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(警察! 警察に駆け込めば………っ!)
すぐそこには交番があり、警察官がいる。
そうすれば保護くらいはして貰えるだろう。
そう思って賀川は走る。
(もう少し! もう少しで……っ!!)
足首に激痛が走る。
賀川はあまりの痛みに前のめりに倒れた。
痛みのする方を見るとそこには勢い良く噴き出す真っ赤な血と足首、そして自分足だった物が見えた。
「――――!!」
そして自分の足だったものより少し離れた所に“それ”はいた。
漆黒の体躯に真っ赤な二つの瞳、鋭い牙に右前足に賀川の物であろう血をべっとり付けた爪をもつ獣の姿をした化物だった。
そしてその後ろに黒いコートを身に纏った長身の男が立っていた。
「遊びは此所までだ、オルトロス。危うく獲物に逃げられてしまう所だったではないか」
オルトロスと呼ばれた化物はグルルと鳴いた後ゆっくりと賀川に近付いてくる。
「さて、女よ。お前に恨みはないが我らの贄(にえ)となって貰うぞ。怨むなら人より少しばかり高い魔力を持って生まれた自分を怨むがよい」
「……ぁ、ぁ」
そこで賀川はもうどんなことをしても自分は助からないと悟った。
「食事の時間だ。存分に喰らうがいい」
あっと言う間に女だった物はただの肉塊へと変わり果てた。
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