名前の理由

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   *  しばらく後、水樹さんに聞いた理由を先輩に話した。すると先輩は腹を抱えて笑った。何でそんなに笑うのかわからず、「どうして笑うの」と思わず聞いた。 「あいつが名前を呼ばれたくないのは、昔バカにされたからだって店長が言ってたぞ」 「バカにされた?」 「圭人って、ずらして読むと時計になるだろ? あいつ昔から時間に厳しかったらしくて、何かと『水樹は時計だからな』みたいに言われたらしいぞ」 「そんな理由だったのか」  そりゃ呼ばれたくなくなるかもしれないね。私も小学生のとき、「花子なんだから、名字は山田だろ?」とか言われたなあ。懐かしい。 「てか、何で店長がそんなこと知ってるの?」 「え。店長と水樹は小学生のときの同級生だ、から……知らなかったのか?」 「て、店長と水樹さんって、同い年なの!?」  店長が何歳も年上だとばかり思っていたのに。 「今まで生きてきて、一番驚いたわ」 「大げさな」  先輩のつぶやきは耳に入らなかった。私は腕を組み、はーっと息を長く吐いた。 「まだ心臓ドクドク言ってるや」 「そこまでかよ」 「確認する?」  やあっと先輩の手を取り、私の胸へ近づける。先輩の顔がみるみる赤くなり、金魚みたいに口をパクパクしている。 「嘘だよ」  私は水樹さんみたいににやっと笑い、手を離した。
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