403人が本棚に入れています
本棚に追加
/20ページ
*
しばらく後、水樹さんに聞いた理由を先輩に話した。すると先輩は腹を抱えて笑った。何でそんなに笑うのかわからず、「どうして笑うの」と思わず聞いた。
「あいつが名前を呼ばれたくないのは、昔バカにされたからだって店長が言ってたぞ」
「バカにされた?」
「圭人って、ずらして読むと時計になるだろ? あいつ昔から時間に厳しかったらしくて、何かと『水樹は時計だからな』みたいに言われたらしいぞ」
「そんな理由だったのか」
そりゃ呼ばれたくなくなるかもしれないね。私も小学生のとき、「花子なんだから、名字は山田だろ?」とか言われたなあ。懐かしい。
「てか、何で店長がそんなこと知ってるの?」
「え。店長と水樹は小学生のときの同級生だ、から……知らなかったのか?」
「て、店長と水樹さんって、同い年なの!?」
店長が何歳も年上だとばかり思っていたのに。
「今まで生きてきて、一番驚いたわ」
「大げさな」
先輩のつぶやきは耳に入らなかった。私は腕を組み、はーっと息を長く吐いた。
「まだ心臓ドクドク言ってるや」
「そこまでかよ」
「確認する?」
やあっと先輩の手を取り、私の胸へ近づける。先輩の顔がみるみる赤くなり、金魚みたいに口をパクパクしている。
「嘘だよ」
私は水樹さんみたいににやっと笑い、手を離した。
最初のコメントを投稿しよう!