作る理由

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「クッキー? ああ、前に試作していたやつ!」 「そう。卓がいなくなって、ほったらかしていたけど」  水樹さんが言っていた“フェアー”とは、コーヒーを頼んだ人にクッキーをサービスするという、以前にあった案のことだった。 「ひと月くらい、やろうかなと」  水樹さんはカウンター席に座り、B5用紙に何かを書き込む。メニュー表のデザインでも考えているのかな? そっと覗くと、未知の生物が……ミミズに足を生やしたような生物がいた。 「何ですか、それ」  紙を指差し、恐る恐る聞く。なんというか、なんとも言えないというか。 「考えごとをすると、ついつい描いちゃうんだよねー猫」 「……え」  いま何て? 自分の耳を疑い、水樹さんに改めて訊ねる。 「なかなか上手でしょ、猫」  空耳じゃない! でも怖くて突っ込めない! 私はにへらっと笑ってごまかした。 「クッキー、誰が作るんですか?」 「卓」 「私も作りた」 「却下」
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