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水樹さんは下の名前を呼ばれることが嫌いらしい。なぜかと先輩に聞いたけれど、水樹さんにガッツリ阻止された。
だから私は、勇気を出すぜ。
「水樹さん!」
夏休みも中ほど、平日のランチタイムが終わり、休憩時間。今日はランチとディナータイムぶっ通しで働く。今日いるのは、私と水樹さんと店長だけ。そして、店長が寝ると言って部屋に戻ったのを見計らい、ここぞと勇気を出して話しかける。
「なに」
前日の売上の書かれたノートを確認しながら、水樹さんが言う。
――やるのよ花子! 花子はできる子!
「水樹さんは何で下の名前呼ばれたくないの?」
「それはすぐに答えなきゃだめかな?」
ノートから視線だけを私に向ける。この視線を受けてもなお突進できる人がいたら、私はカフェオレ5杯奢ってもいい。邪悪というか、刺すような目というか。ともかく私は首を横に振った。
「すぐじゃなくて大丈夫デス」
勇気ってポッキリ折れるんですね! ハハッ!
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