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その日はいつもとは違った。
頭に靄がかかった様だった。
堅いベッドから起き上がる。
体中が痛い。骨がポキポキと鳴る。
靄を晴らすため、洗面台で顔を洗う。
ぬるい水が出る蛇口。
なかなか靄が晴れず、幾度も洗った。
囚人服の上がびしょ濡れになっていた。
頭から水をかぶる。
晴れない、霞みがかったままだ。
どれだけの間そうしたのであろう。
もう一つ違う事があった。
それは食事だ。パン一つとマグカップ一杯のシチューではなかった。
ステーキであった。
合成家畜の肉の味では無かった、たぶん牛肉だろう。
特級街民クラスじゃ無ければそんなものは一生口にする事は無いだろう。
その日はそれが出た。
ミディアムレアに焼かれた肉にガーリックの効いたステーキソースがかかっている。
匂いを嗅いだだけで目眩がする。
肉は柔らかく、甘い。
牛のあぶらの甘みだ。
500ダン(1ダン=1.31グラム)はある、でかいステーキ。
ナイフもフォークも使わずに貪った。
何故ステーキが出たのかと、疑問はあったがそれはそれを平らげてから思考することに決めた。
これ以上無いという程、口周りや囚人服の胸元をソースで汚した時に食事を終えた。
これからは日課でもある、何故なのか?を問う筈だったが、急激な睡魔に襲われ、そのままの場所で眠りに着いてしまった。
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