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「えっいいんですか?」
その言葉に感嘆の笑みをこぼす翔。
「ああいいよ…特別許可だハハハ」
大尉が無線に繋ぐ。
「楓少尉、彼をEⅠに乗せてやりたいんだがいいかね?」
「えっ!?彼を乗せるんですか?」
「ああ…見せてやれ機体の性能を」
「分かりました…軽く空を散歩して来ます」
「そうしてくれ…」
翔はメットと酸素マスクを受け取り飛行形態に可変した機体に近づいて行く。後部座席に着くとキャノピーが閉められた。
楓少尉が機体の向きを変えながら、後ろを向いた。
「不知火君準備はいい?マスクはちゃんとしといてね。アイシールドはメットのサイドに開閉ボタンがあるわ。約束通り、連れて行ってあげる」
翔は緊張していたが、酸素マスクをして前席にしがみついた。
「こちらイーグル1!訓練飛行行きます」
「ジッ…こちら管制塔…了解!イーグル2が入れ替わり帰還する…気を付けて飛び立て!」
「こちらイーグル1…了解」
楓少尉は二本指を額にかざし、大尉に合図を送った。
イーグル2が飛んできて無事に着陸すると、フラッグが振られた。
EⅠのホバ-音が辺りに轟く。
機体が宙に浮きスタンバイ。
「行くわよ!」
かけ声と共にフルスロットル、ジェットエンジンが火を吹いた。物凄いGが、翔の体に襲いかかる。
「くっ…」
機体は、高度3000mまで急上昇した。今度は、角度を付け急降下をする。キリモミ状態に入り、高度1000m程で平行移動に移る。
翔は、終始座席にしがみつきっぱなしだった。
(すっ凄い…こっこれだ…俺が求めていた物は…)
再び機体は上昇し、今度は雲を突き抜け雲の上に出た。
「平気かな?不知火君」
「へっ平気です」
「良かった…気を失ってなくて…。見て外を」
翔が外をみると、雲海が一面に広がって見えた。
「綺麗でしょ…、いつも夕焼けの雲海を見るのが好きなのよ」
翔はこの美しい光景に、感動し声も出ないようだ。
「さあ、そろそろ帰りましょ。大尉が待っているわ」
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