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…1週間後
東京ベイエリア、ストリーム競技場…
晴れ渡る空の下、楕円形の競技場は観戦に来た人達でごった返していた。
走り回る子供達や撒き散らされた紙吹雪、中には応援団も駆けつけ太鼓と威勢のいいかけ声を響かせていた。
場内アナウンスが流れる。
『さあ!始まりました。第3回湾岸杯!今年はどのチームにこの優勝旗が手渡されるでしょうか!』
競技場内の選手入場口から、バイクにまたがった選手達が続々と入場する。
翔達ブラックスは、前から数えて四番目の入場となった。
全12チームで、トーナメント方式で優勝チームを競い合う。
最後尾に、やはりあのチームもいた。ストレングス!!
相変わらずのど派手なバイクだ。彼らが入場すると、観客は一斉に歓声をあげる。
翔達ブラックスとの対戦結果は2勝1敗で僅かにリード。翔の入院期間にブラックスは、ストレングスに1度敗北、三度挑むが三度目は僅差で敗れた。
翔に取って今大会は、引退試合と言う事もあって負けられない試合となっていた。
『さあ!前回覇者ストレングスが入場致しました!優勝旗を掲げ、意気揚々とした入場です。今回の大会、ライバルであるブラックスとの対戦も楽しみですね~♪』
『そうですね~あのチームは…』
開会式が終わった後の控え室…
静かに精神を集中する翔が控えのベンチに座っていた。翔を含め、三人の高校三年生選手は、1人は大学受験をし、合格後このブラックスを率いたいとの事。もう一人は、翔と同じく兵役により軍隊に入る事が決まっている。今回はこの2人の引退試合と言う事になる。
「翔!準備はいいか?もうすぐ試合だ」
翔達の初戦は、第2試合だ。
「ああ…」
翔は真っ黒な革のグローブに指を通し、席を立った。
順調に勝ち進むブラックス。
第一シードのストレングスも、上がってくる。
決勝戦は案の定、この2チームの対決となった。
双方フィールドの中央部で睨み合う。
シグナルが青に変わり試合が開始された。
ひたすら走りまくる翔。何か知らない、心の奥底から湧き上がる気持ちを爆発させるかの様に…
0対0のままどちらも譲らない。
試合終盤…翔の目の前に今までこなかった絶妙なパスが来た。
翔は機体を駆り、渾身の力を込めてボールを蹴った。
ボールは微妙な回転と共に、ゴール前でドロップする。
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