スピード狂

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 この日、東京ストリームドームは、四万人の観客の歓声でどよめいていた。  ドームのフィールドに、5人の若者が立っている。彼らの脇には、愛用のフローターバイク。機体の色は漆黒に塗り潰されている。  反対側にも他の5人と、5台のバイク。こちらの機体の色は、トリコロールカラーのど派手な奴だ。  アナウンスが入る。  『さあ、待ちに待った決勝戦!遂に開幕致しました。前回大会優勝チームストレングス!今回もど派手なトリコロールカラー決まってますね』  そのアナウンスに観客が、一斉にどよめいた。  『対する挑戦者チームはブラックス!まだ出来て間も無いチームですが、よくここまで勝ち上がって来ましたね』  こちらは、観客のブーイングが轟く。  中央の信号が赤赤青と変わると、ホイッスルが鳴り響いた。  それと同時に、頭上からラグビーボールにも似た球が落ちてくる。  10人の若者は、バイクにまたがりイグニッションキーを廻す。そして、バイクが宙に浮き試合開始だ。  5対5でこのラグビーボールを奪い合うのだ。  自分たちの後方には、死守すべきゴールネットがある。ここにボールを入れられたら一点を失う。  五台の漆黒のバイクが、勢い良く走り出した。一台は後方に待機し、ゴールを守る守護神となる。  相手側も、一斉に走り出した。  最初にボールを捕らえたのは、トリコロールカラーの一台だった。  それに向かい二台の漆黒のバイクが、両サイドから走りくる。  「翔、行け!」  その黒いバイクの一台が、翔と呼ばれる少年に叫んだ。  ボールを持った相手は、挟まれまいと必死でバイクをコントロールする。…が、その頭上を翔のバイクが疾走する。  体がバイクから落ちそうなくらい傾け、奴のボールを奪い取った。  翔は、そのまま地面を滑らすように反転。相手側のディフェンスの動きを見る。相手陣営の二台のトリコロールカラーのバイクが、翔に迫ってくる。  翔はすかさずボールを、味方にパス。相手側は意表をつかれ、バイクの方向を変えようとするが上手くいかず、翔の目の前でクラッシュした。  このクラッシュこそ、このゲームの見所とも言える。  観客の歓声が轟く。  翔は手を回し、ゴールするように促しながら自分も反転。ゴールへ向かう。
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