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体を斜めに傾け急ブレーキ。そのまま直角に相手ゴールまで突っ走る。
とりあえずはディフェンスがカバーに入っていたが、さっきの衝突の衝撃で一台はハンドルが曲がってしまってるようだ。上手く操作出来なく、動きが妙にぎこちない。
翔が腕でシュートすると、それを辛うじて敵ディフェンスが跳ね返えした。
ここぞとばかりにもう一台の黒いバイクが、こぼれ球を拾う。敵ディフェンスは、その人の方向へ走り出す。
黒いバイクのフォワードが翔にパスを出した。翔はバイクごとボールに突進、キーパーのみのゴールへバイクのフェンダーを使いシュートを決めた。
観客席に居座る女将校が、その動きを見て言った。
「あれが17歳の動きですかね、後藤大尉」
「素晴らしい動きだ!来年には彼も、軍の兵役でこちらに来る筈だ。是非とも、ウチに欲しい逸材だな」
「スカウトしときましょうか?」
女性は大尉の顔色を伺うように覗き込んだ。
「楓少尉、頼むよ…」
「了解致しました」
1時間後…
試合は終わり、結果2-1でブラックスの初優勝。
翔達は優勝トロフィーを掲げ、ゴール前で記念撮影。
それを見ていた少尉は、足早に選手の控え室へと向かった。
記念撮影を終えたブラックス一同が控え室に戻ると、部屋の前に黒髪ロングヘアーの若い女性が立っていたのが、目に入った。
楓少尉である。少尉は、ツカツカと背番号7に近づいて行くと徐に語りかけた。
「あなたが不知火君?」
翔が不思議そうに問い返す。自分には、軍人の知り合いなんぞはいない。
「そうですけど…、軍人さんですよね?その制服から見ると…」
「そうよ…JAFの楓少尉です」
翔はそれに、素っ気なく返した。
「その少尉がなんか僕にご用ですか?もしかして、サインが欲しいとか…はは」
その返した言動に、メンバーが笑った。メンバーの1人が言う。
「モテるからな…こいつ!」
楓少尉は、そのちゃかしを気にしない素振りで返した。
「まぁ、そのような所ね」
再びメンバーのちゃかしが入る。
「ヒューヒュー♪このこの~。ごゆっくり、じぁな。俺達は、先に着替えて帰るからよ」
「ちょっといいかしら?」
楓少尉は、翔を強引に休憩所へと連れて行こうとする。それに、半分興味本位で付いて行く翔。
「話し長くなりますかねー」
「いいえ…直ぐ済むわ」
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