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「おやっ?知らないかい。去年、空軍にも配備されたんだ。まあ知らないのも無理ないか…余り公表してないもんな」
「話しはそれだけかい?俺は行くよ」
「あっちょっと待ってくれ!もし空軍に入るなら俺を訪ねて来て欲しい。出来れば入隊前にね。これを渡しとくよ」
そう言うと大尉は名刺を差し出した。
「もし興味があるなら、ここに連絡してくれ。今まで以上にスリリングな毎日が送れる事を保証するよ」
水陸両用M.Aは、5年前に実用化。軍機としては、4年前に実戦配備となった。
しかし、空中戦の出来るM.Aは、開発が遅れに遅れ、去年やっとの事で開発に成功したのだ。勿論、日本製が世界で初めて。
実生活では余り実用性がないので、即軍事用として扱われる事になった。
翔はジュースを一気に飲み干すと、休憩室を後にした。
…数ヶ月後
翔は、相変わらずストリームの試合に参加していた。
ドーム内に相変わらずのアナウンスが、響き渡る。
『ゼッケン7ボールを取ったぁ!さあここからがブラックスの反撃となるか!』
翔は、バイクをかっ飛ばしていた。
ボールを持ち、グングンと加速をして行く。視野が狭まり、埃やチリがスローモーションのように後方へ流れて行く。
目の前に相手チームのディフェンスが、突然現れた。
翔は咄嗟に思う。しくじった…と。
時が止まったように、自分の体が宙に浮くのを感じた。
(俺は超えてみたい…超えてみたいんだ…)
そして、そのまま激しく地面に叩きつけられた。
「うっぐっ…」
(俺は死ぬのか…)
皆の騒ぎ声と共に担架が運ばれてくるのが、消えゆく意識の中にうっすらと見えた。
…翔 目覚めろ 翔
翔はその心に響く声によって、目が覚めた。
何時間意識を失っていただろうか?
ふと自分が横たわるベッドの脇に、人の気配を感じた。気配の方へ視線をずらすと、そこには1人の女性が立っていた。…どこかで見た事がある。そうこの黒髪、透き通るような大きな瞳、楓少尉である。
彼女は腕組みしながら、真っ白な壁にもたれかかっていた。そんな彼女と目が合うと、彼女がゆっくりと近づいて来た。
「気が付いたみたいね…。あなた無茶するから…」
「ここはどこですか?楓さん…。もしかしてずっと側に?」
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