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「馬鹿ね~、そんな訳ないじゃない。あなた、ゲーム中に事故って大変だったのよ。私はその情報を聞きつけて、今日お見舞いに来たって訳」
「お見舞い…って事は、ここは病院って事か…痛っつつ…」
「無理しない方がいいわ。なんてったって、全治1ヶ月なんですから…」
「全治1ヶ月!痛っ」
翔は自分が置かれている状況が、わからないでいた。
「肋骨骨折に上腕骨折、後は大腿骨って所かしらね」
その余りにも酷い症状を聞いて、投げやりになる。
「そんな~」
「泣き言言わないの!今の医療なら直ぐ治るわ」
「来月の試合が…」
「ほう…既に試合の心配をしてるのね。それどころじゃないっつーの!…あなたもしかして…限界を超えてみたかったんじゃない?…その限界の向こうに何が見えるか、見てみたかったんでしょ」
図星だった…。何もかも…。
「…その通りかも…あの時、何故だか自分の限界を確かめてみたくなったんだ…」
「やっぱりね…、ところで…どこに入隊するか決めた?」
「それがその…正直言って今迷ってます」
「ふ~ん所詮あんたの事だから、あ~憧れの名取隊員が居る陸軍にしようか、それとも最新鋭の機体がある空軍にしようかってとこじゃない」
「えっ!なんで分かるんですか?」
「あんたのその単細胞の頭の中を覗くなんて朝飯前よ」
翔はため息と共に俯いてしまった。そんなに単細胞なのか…。
「私についてきなさい…その限界とやらを見せてやるわ」
翔は無性に、その限界とやらの先に見える物を見てみたくなった。
…2ヶ月後
退院した翔は、空軍の基地の前に佇んでいた。高鳴る緊張感…、彼女が言ったその先に見える物とは?そんな期待感で胸がいっぱいだった。
(ここが空軍基地か…)
「後藤大尉へ…」
了解ツナゲマス…ピ・ポ・パ…トゥルルルルル
翔が着けているのは、超小型の携帯電話。イヤホンとマイクが一体化したタイプの物だ。音声認識装置により、簡単に相手に繋がる。
「はいこちら後藤」
「後藤大尉 翔です!今基地の前まで来ました」
「お~不知火君か…。中に入りたまえ。検問所にはこちらから連絡しておく。『後藤大尉に呼ばれた者です』と言えば通してくれるだろう」
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