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そうして人だかりへと駆けつけたサラだったが、ここでひとつ問題が発生した。それも彼女の努力が及ばないところでの、なんとも残念と言わざるを得ない問題が。
「あう……み、見えないです……!」
たまらず苦悶の声が上がる。大小様々、数多くの生徒によって形成されたそれは小柄な彼女にとってあまりに大きな壁だった。必死に背伸びをしてみたりその場で跳ねてみたりするものの、騒動の中心にはまるで目が届かない。
前々から「小さくて可愛いね」などといった、褒められているのか貶されているのかいまいちよくわからない類の賞賛を受けてきたものだったが、そのことで得をした記憶があまり――というよりも、まったく――ないサラとしては己の小さい体躯は煩わしいものでしかなかった。
もちろん今回もその例から漏れることはなく、そうなるとやはり貶されていたのではないかと疑わしく思えてくる。
(うー……! で、でも、いまはそんなことどうでもいいんです。とりあえず、この状況をどうにかしないと)
再び胸の前で拳を握り、自らを叱咤する。件の言葉の真意がどうであろうと、いまの問題とはなんら関係がない。いまはいかにして中心まで辿り着くかということだけを考えていればいい。
その気になれば背の高い男子生徒辺りを捕まえて話を聞くことも可能だった。それでも充分になにが起こっているか把握することはできただろう。
だが、人伝(ひとづて)に話を聞くだけで終わらせるつもりなど毛頭なかった。基本的に彼女はなんでも自分の目で見て確認し、そこで初めて納得することにしているからだ。サラは最初から是が非にでもこの障害を突破する心積もりである。
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