◆出逢いの風

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  「ああ、やっぱりです……」  まず最初の感想はそれだった。心の声が思わずといったように呟きとなって漏れ出る。彼女が危惧していたことが現実となってしまったのだ。  多数の野次馬からなる大きな円の中心では、一○人前後の生徒――いずれも男子生徒――が小さな円を作るようにして対峙していた。場を満たす剣呑な雰囲気が彼らは決して友好的な関係でないということを雄弁に物語っている。予想通りで想像通りの光景がそこには待っていた。  ――魔法行使者と呼ばれる者たちには、一般的に自信家が多いとされている。生まれながらにしての天才といって差し支えない彼らは、そうでない者と比べて人数が圧倒的に少ないこと、将来の強力な軍事力の担い手として国から手厚い待遇を受けることなどから、幼少より丁重に扱われる傾向にあった。早い話がエリートとして褒めそやされて育ったというわけだ。  その彼ら自身、天より賜った魔法行使の資質を誇りに思っている場合が大半であるため、周囲からの賛美も相俟(あいま)って増長してしまうパターンが多いらしい――というのが一般論だ。もちろん、個人による気質の差だって当然のようにあるため、一概にそうだと断言することはできないのだが。  とはいえ、 一般的にそう言われているということは、そういった例が少なからずあるからであり、事実サラもその手の人間は数多く見てきていた。傲慢で高飛車な魔法使いはたしかに多いと思う。それに、彼女が聞いていた噂話の件だってある。
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