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(先生は……いないんですか? ……どうして毎年心配しているというのにそれを警戒する動きがないんですかっ!)
本来ならこの場を収めるべきであろう教師の姿がまるで見当たらないのを確認し、サラは愕然として目を見開いた。危惧されているというからには然るべき体制が整っていて当たり前だと思っていたのだが、それがないのだから仕方なくもある。
もし大事には至らないと楽観視しているのならそれは間違いだ。これは公正な審判と理性のもとで行われる訓練や練習試合の類とは別物なのだから。ルールなしの場で魔法行使者同士が争っては、それはそのまま戦争と変わらないだけの危険性を孕むことになる。
(どうします?)
サラは自問した。いまどうすべきか、果たしてどう動くことが最良なのか、逸る気持ちを抑えて答えを模索する。
(……やるしか、ありませんか?)
また別の疑問を自らに投げかける。このときの彼女はすでに半ば以上覚悟を決めていた。
このままでは必ず他の生徒たちも魔法を使おうとするだろう。一○人近い規模で魔法の力が荒れ狂っては周りにいる生徒たちにも確実に被害が及ぶ。それだけでなく争いの輪をさらに広げることにもなりかねない。
そうなってはまず大混乱に陥るだろう。せっかくの門出が台無しになる。
それだけは避けねばならない。
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