◆出逢いの風

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   目の前の生徒たちはすでに言葉での説得は意味をなさないところまできてしまっているだろう。特にも火の魔法を展開している少年は頭に血が上っているのが一目瞭然だった。  そうなってくるとこの場を比較的穏便に収めるためにサラがやれることは限られてくる。他にやろうとする者がいない以上、彼女が出ていく外にない。 (でも、現実問題としてわたしにやれるかどうか……?)  時間がないのは承知の上でもう一度状況を整理する。火に油を注ぐ結果になってしまっては元も子もないからだ。  生徒の数は一○人ほど。その内、すでに魔法を展開している者は一人。使おうとしている者はおそらくほとんど。それに対するこちらはたった一人だ。  果たして立ち向かえるか。 (……やれます。やれるはずです)  いまこの場におけるあらゆる要素を考慮し、そうして彼女が出した結論は――肯定だった。  本当に危険な域まで理性が飛んでいるのは魔法を展開している一人だけだろうとサラは見当をつけていた。他の生徒たちは彼が魔法を発動させたことによって多少なり自分を取り戻しつつある。事態の切迫さに気づいたためだろう。魔法を使おうと考えているのも攻撃というよりはむしろ防衛のためである可能性が高い。  だとしたら彼女が叩くべきなのはただ一点。すなわち魔法を放たんとしている少年一人に限られてくる。彼さえ無力化してしまえばとりあえず大きな被害は出ないだろう――サラはそう結論づけた。なら、あとは実行するのみだ。
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