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そんな人によっては恐怖感すら覚えるような眼光を一身に浴びながら、しかしロイという少年は小揺るぎもしない。平然とそれを見返した。二人の視線が空中でぶつかり合い、そして弾け合う。
「てめえ……もう一度言ってみろよ」
「ええ、何度でも言って差し上げましょう。あなたは馬鹿です」
レオンの威嚇するような声にも臆さない。むしろ先ほどよりもはっきりとそう告げた。
「いいですか。わたしはなにもあなたのやっていることのそのすべてが的外れだとは思っていません。ここにいる方々が情けない。なるほど、それは正しいでしょう。思慮に欠けた振る舞いは恥ずべきものだとわたしも思います」
遠慮のないその言葉に、彼らを取り囲んでいる喧嘩少年たちからまたも不穏な空気が発せられ始めた。レオンの分と合わせてかなり苛立ちが募ってきている様子だ。
ロイの発言は確実に的を射ており、そもそもそんなことを言われていること自体が完全に彼らの自業自得なのだが、やはり好き勝手言われるのは不満なのだろう。元々プライドが高い生徒たちであり、だからこそこの争いが起こったのであろうことを考えてもそれも仕方ないことなのかもしれないとは思う。
ただ、正しいことはたしかなのだが、それでもサラを含む周囲の生徒としては気が気でなかった。どうして彼らはこう火に油を注ぐようなことばかり言うのだろうか。ロイが出てきたときには安堵したものだったが、どうも雲行きが怪しくなってきた。背筋に冷たいものを感じながら先行きを窺う。
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