1723人が本棚に入れています
本棚に追加
「はっ、そうだろうが」
「ええ、そうですね」
どことなく肯定的な言葉を受けて調子づく――どうやらその直前に馬鹿と言われたことは棚上げした模様――レオンにひとつ相槌を打ったところで、ロイは一度話を切った。呆れたように頭を振り、そうしてからレオンを見る。
「……ですが、そうだったとして。それを理解した上で割って入っていったあなたはどうですか? いえ、割って入っただけならよかったでしょう。しかしあなたはあろうことか自ら同じ舞台に上がろうとしたわけです。彼らがどうしようもなく情けないと知りながら、自分もそう在ろうとしたわけですよね? ……だから馬鹿だと言っているんです」
一方的にまくし立て、ロイは深々とため息を漏らした。対し、それを見据えるレオンの目は相当な怒りを孕んでいるように見えた。
ここまでの短い時間を見ただけでも彼が好戦的で、また自信家であることをサラが理解するには充分だった。言うなれば典型的な魔法行使者だ。そしてその強い自尊心はこうした侮蔑的な言葉を酷く嫌う。
「それはあれか? 俺がこんなやつらと同じだって言いたいのか?」
「おや、いくらなんでもあなたと一緒にされてはこの方たちが不憫でしょう?」
「……上等だ」
くすくす笑うロイを見、果たしてレオンは限界を迎えたらしかった。唸るように呟くと、一歩を踏み出す。
「どけ」
ロイが押さえていた少年の肩を乱暴に掴み、後方へ押しやる。力任せにロイから引き剥がすようにして。おそらくいまの彼はもうロイ以外のほとんどを意識の外に締め出しているのだろう。
釣り上げられた目は人を視殺できそうなほどに鋭く、まとう覇気は剣呑そのもの。どういうわけか空気が震えるような錯覚さえした。
単純にわかりやすく言えば――キレていた。
最初のコメントを投稿しよう!