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「へっ、どうしたよ? 手ェ出したらお前も馬鹿の仲間入りなんじゃねえのか?」
「おや、誰かさんのように自分から頭を突っ込んだならそれはただの馬鹿としか言いようがありませんが、それとこれとは話が違います。正当防衛ということでしたらわたしとて手を出すにやぶさかではないですよ?」
皮肉めいた口調でレオンが笑うも、ロイは余裕を崩さない。紳士的な微笑みはいまだ継続していた。ただし、裏にはひしひしとした迫力を携えて。
「……相変わらず口の減らねえ野郎だ。上等だよ。やっぱてめえとは白黒はっきりつけておいたほうがよさそうだ」
「やれやれ、すぐ暴力に訴える。短絡的ですね。あなたのような人が魔法使いの品位を貶めているのだということをよく自覚していただきたいものです。けれどまあ、そんなあなたを力で屈服させるというのもそう悪くはない」
「はっ、そうか……よ!」
言うや否や、レオンは躊躇なく拳打を放った。狙いは顎。先ほどの裏拳より遥かに鋭い一撃が唸るようにして人体急所に迫る。
「……つくづくせっかちな人です」
涼しげな様子を保ったまま、ロイはすんでのところで拳を避けた。身体を右にずらしながらそれを躱し、充分に引きつけてから右拳を突き上げる。狙いはレオンと同じく顎。ショートアッパーがカウンター気味に放たれる。
「食らうかよ!」
最早確実に決まると思われたその一撃だったが、しかしレオンは空いていた左手で見事それを防いでみせた。並の動体視力ではこうはいかないだろう。攻撃を受けた勢いを呼び水として一旦後ろに飛び退(すさ)る。
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