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――魔法という概念がある。誰しもが持つ魔力と呼ばれるエネルギーと言霊を媒介として世界に干渉し、超常的な事象を呼び起こすというものだ。
かつて時が未だ神代にあった頃、この世界のすべては元素を司る精霊によって構築されていたと伝え聞く。すなわち地、水、火、風、雷の五大元素である。
古い文献によれば属性には他にも光と闇の二つの存在が確認されてはいるが、それらの出自については伝承をいくら遡ろうともはっきりしなかった。魔法学史上最大の謎と言っていい。だが、いずれにせよ世界がそれらによって形作られているのは確からしかった。
人間を始めとする諸生物もその例外に漏れることはなく、根元は精霊にあるという。なにかしらの精霊の加護を受けることで彼らは形を成していた。
それだけでなく、すべての生物が己を構築する精霊の象徴する力を内に秘めることとなった。つまるところ、その力こそが魔力と呼称されているものである。
以前は誰でも魔法を使うことができたという。人間にとって、魔法という力はとても身近な存在だったらしい。
だが、神代から幾星霜(いくせいそう)もの時が流れたいまとなっては、精霊の加護も薄れ、同時に与えられる魔力自体も少なくなっていた。世界に語りかけ、魔法を具現するに足る人間の数はもはや下降線の一途を辿っていると言わざるを得ないのだった。
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