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「本当に、大きいです。さすがセントラル……これは頑張らないといけませんね」
胸の前で小さな両拳をむんっと握り締め、少女は独白のように囁いた。やる気充分といった様子で目を輝かせている。どこか挑戦的にも見える眼差しが、眼前に聳える建造物へと向けられていた。
王立魔法学校――通称、セントラル。数少ない魔法学校の中でも、特に名門として名を馳せているのがこの場所だった。言葉通りにラザリアの中央都市ローレン――ただし、演習場などを確保するため市街地ではなく郊外――に校舎を構えている。
これまでも士官を始めとした数々の軍人を輩出している有名校であり、設備も敷地の広さも段違い。入学への水準も倍率も高く、簡単に敷居を跨ぐことは叶わない。この学校の生徒となることを夢見る者も決して少なくはない。
そんな名門校の制服に少女は身を包んでいた。厳しい入学試験を突破し、晴れてセントラルの生徒となった彼女は、名をサラ・パーシバルという。
彼女もまた精霊の加護により魔法行使者になるべくして生を受けた者の一人だった。その身体の内では一般人には及びもつかないほどの魔力が息づいている。
(人がたくさん……)
巨大な正門の方へ、ちらと視線を投げる。次から次へと、どんどん人が集まってきていた。
サラがここにたどり着いてからそれなりに時間が経ってはいるが、それにしても多い。人の波はとどまることなく押し寄せ、まるで途切れるということを知らないかのよう。
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