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(この人たちみんなが仲間で、そしてライバルなんですよね……)
感慨深げに他の生徒を見つめ、サラはふとそんなことを考えた。
セントラルは基本的に全寮制だ。やむを得ない事情があったりしない限りは寮生活となる。かくいうサラも今日から寮に入ることが決まっていた。荷物の搬入はすでに済ませてあるため、いまも最低限の手荷物しか持っていない。
サラの先輩に当たる生徒たちもそのほとんどが敷地内の学生寮で生活しているはずであり、そうなるといま校門の方角から続々と集まって来ているのは大部分がサラと同じ新入生だということになる。つまりはライバルだ。
先輩たちをライバルでないと言うつもりは毛頭ないが、やはり同級生である彼らへのほうがそうした意識を持ちやすい。なにしろこれから最低でも四年――さらにはその後の人生でもずっと関わり続けていくであろう面々だ。
場所はセントラルであったり王国軍であったりと様々だろう。だが、自分たちが魔法行使者として歩んでいく限り、おそらくこの縁が切れることはない。
(不思議なものです)
サラはどこか宿命めいたものを感じていた。それは魔法を行使する素質を持って生を受けたことに対する、漠然として抗いようのない〝なにか〟だった。
ここへ来るのは彼女自身が選んだことだ。だが、魔法行使者として生まれること自体を彼女が選んだというわけではない。
この世界を創造したという神は、一体どんな基準で自分を選んだのだろう。あるいは、自分のなにが神に選ばせたのだろう。ただの偶然なのか、はたまたそうなるべく理由がなにかあったのだろうか――サラはそんなことを常々疑問に思っていた。そこに隠された意図が量り切れず、いつもすっきりしない感覚に陥る。
しかし、不思議と悪い気はしなかった。知的欲求が満たされないことによるもやもやした感覚はたしかにあるが、別段それが不快だというわけでもない。彼女はこれも巡り会わせだと割り切って考えていた。
魔法行使者として生まれたおかげで今日この日の出会いがあると考えれば、そう悪いものでもないような気がした。
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