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『使命を全うした者が目の前にいる。せめてもの敬意を示して、埋めてあげなさい』
使命を、全う、した。
なぜか、僕の耳に重たく響いた。
『理由はどうであれ、死している者は何人たりとも使命を果たしているから、今そこにいるんだよ。何も考えなくていい。もしかしたら来世で逢うかもしれない友に、挨拶をするだけでいい』
僕は黙って頷いて、冷たい土を黒猫の身体にゆっくりとかけながら、おじいさんに聞いた。
『貴方は、輪廻を信じているのですか?』
おじいさんは、笑う。
『地球に生まれたからにはいつどこで出会うかわからない。人も動物も虫も、草木や花、海、山みんなね。次の世界で出逢ったら、それらは友かもしれないし、家族かも知れないよ。またね、の挨拶は必要だ』
『そうですね』
僕は答えた。
それは、そうだと思った。
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