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ねぇ、これはちょっとやばくない?
でも、期待しちゃうんだよね。
ほら、あたしら結局発情期ってやつ?
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特別用事があったわけでもないが話し込んで、あっと顔を上げればもう空は真っ赤だった。
日直の人がきちんと戸締りをした教室の窓から、オレンジ色が差し込んでいる。
自分のではない、誰かの机をはさんで、顔の片側を夕日に照らされながら姫も佐助も、他愛ない話をしていた。
佐助は3年生で姫は2年生だが、姫はよくこの教室を訪れていた。
姫は佐助の幼なじみで、腐れ縁だ。
異性であるから、当然そーゆー話しもする。
「なァんか、暇」
話すことなくなったぁー、と頬杖をついてあごを突き出しながらも、姫は席を立とうとはしなっ難し、佐助も佐助で、「じゃあ帰る?」と切り出してもやらない。
だから、その時点でお互い、呼応の関係は済ませてあったといっていい。
「じゃ、何かする?」
「何かって?」
「イケナイ事とか」
「イケナイ事って?」
佐助がからかう様に言うのに、姫はわざと笑顔で左右交互に首をかしげて聞いてやる。
それから、二人でくすくす笑う。
もともと姫は少しだけ体を乗り出して両手で頬杖をついていたから、佐助がほんの少し顔を近づけたとき、打ち合わせたようなタイミングでさらに少し体を乗り出した。
耳元に、ヤツはわざと吐息をかけてこう言った。
「えっちなこと」
くすっ、と姫はくすぐったさに肩を少し上げた。
「やァだ、佐助」
「教室でってのも、悪くないね」
「ていうか、デジャブだし」
歯を剥き出しにして、姫は笑う。
俺も、と笑いながら佐助が言う。
姫は片手を頬から離して、少しだけあごを上げて夕暮れを見た。
「溜まってんなら、ヌいてあげようか」
「姫にそれが出来るんだ?」
「あ、ホントに溜まってんの?」
「姫こそ、したいんだろ?」
にこりと佐助が笑うと佐助が面白そうに笑って、背もたれに背を預けた。
そうして髪をかきあげた拍子に姫は、あっと思う。
「夕日と同じ色」
「ん?」
「髪の色」
「あぁ」
「青春の色ね」
「思春期の色?」
「あたしら、もう思春期じゃないわよ」
「「発情期」」
あはは、と今度は姫が笑う。
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