少女

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 あるところに、少女がいました。  少女はどこまでも吹き抜ける青空の下の木陰で、いつもひとりでした。  木葉がカサカサと時折風に吹かれて耳を通り過ぎます。  温かい陽光に空気は穏やかで、幾重にも重なった木葉1枚1枚が少女と絵本のページを彩っていました。 「『お母さん、今日のごはんは、なぁに?』」  少女の小さな、かわいらしい口からきれいな鈴が転がるように物語が紡がれます。 「『そうね、なにがいい?』するとお父さんと女の子は顔を見合せて、にかっと笑って言うのでした。『『オムライス!!!』』」  風がざぁっと鳴って、少女の金糸の髪をさらさらと流しました。 「…そうして、家族は、いつまでも幸せ、に…」  ぽた、ぽた、と絵本に少女の流した涙が弾けました。  木陰の下にいる少女に夕陽がかかりはじめました。  少女の背後にはそびえたつ廃墟がありました。  人ひとり、猫一匹いない街はずれに少女はたった一人でいたのでした。 **************************
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