序章 強制非公開

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インターネットの法整備は遅れてたが、プロクシと呼ばれる海外の代理サーバを経由したり、ゲートと呼ばれる、ネットワーク上の通信の通過ポイントを変更できるものを利用したり、クラック(ハッキング)して他人のパソコンを乗っ取り、それを経由して悪さをした。 当時の警察にはその犯人を捕まえる術も、犯人を特定できる技術もなかった。 システムの不備やセキュリティホール(セキュリティ的な不具合)を利用してアクセスしてくる犯人は、限りなく匿名性が高かった。 掲示板でも、サイトでも「言論の自由」を武器に、皆が好き勝手なことを書いた。 それが誹謗中傷でも、当時はネット社会とリアル社会は切り離され、今なら名誉毀損にあたる内容も不問いにされた。 「あめぞう掲示板」の閉鎖後、そのシステムとスクリプトをそっくりそのままパクって、西村ひろゆきが「2ちゃんねる」を開設した1999年。 それとほぼ同時期、俺は違法コピーのエロ画像と動画をアップしたサイトを次々と有料化していってた。 当時はそれがシノギとして成り立った時代だった。 i-modeが産声をあげ、やがて携帯電話からのインターネットが当たり前になる時代が来るだろうと、当時のネットの住民は口をそろえてそう言ってた。 そこから少し時代が進み、携帯電話からエロ画像やエロ動画が見れる時代がくる。 当時の携帯電話のセキュリティは大甘で、今ならバッテリーを外した部分に記されている携帯電話の「個体識別番号」が意味不明の英数字の羅列だが、 当時は電話番号と英字の羅列だった。 この個体識別番号は、サイト側のアクセスログ(アクセスの記録)にバッチリ表示された。 つまり、そのサイトにアクセスしただけで、サイト側では相手の携帯の電話番号が判明したのだ。 (注・現在の個体識別番号から電話番号が判明することはありません) これを利用しない手はない。 俺は、ネットのUGからスカウトした技術者に命じて、エロサイトを携帯用に続々と変更した。 そして、パソコンサイトの20倍から50倍の料金に設定した。 アクセスしただけで、数万円から十数万円という料金システムのサイトを次々と作りあげた。 携帯ユーザーたちは、アクセスしたはいいけどビビってすぐに接続をキャンセルした。 たとえそれが一瞬だったとしても、サイト側のパソコンにはしっかりと電話番号から始まる個体識別番号が残った。
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