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「いいねえ。伝説の王の遺産、か。いくらで売れるのか想像つかねえな」
「はは、馬鹿だな。相手は黒獅子の玉座<レオ>に座る、最強の王<レグルス>だぞ?」
「敵うわけねえってか? スゲェ剣を持ってるからって、所詮は人間だろうが」
「はは、お前は色んな意味でスゲェな。馬鹿だ」
その男達はそこで互いに笑いだし、別の話題へと移り変わっていく。
しかし同じ話題でさらに陰険な話し合いへ発展しているテーブルもあれば、売れた武器の自慢話に盛り上がるテーブルもある。
「シュヴァルツ・レーヴェ……?」
そんな中、独りが呟くテーブルもあった。真っ昼間だというのに、その男は黒尽くめの格好で料理も注文せずジョッキで酒をあおっていた。
ジョッキを一気に空にして離れた口元が、笑みで嫌らしく歪む。
「面白え……」
企むような独り声が漏れた。しかしそんな小さな声は店内の喧騒<ケンソウ>に飲み込まれて消える。
その男の姿もまた然りだった。
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