序章<prolog>

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   不自然な風が砂埃を巻き上げ、乱暴に空気を叩く翼の音が空に響く。 「グ、ガァァアアアア!!!!!!」  轟音に大気が震える。“それ”は荒ぶる獣のような咆哮を上げた後、おびただしい涎を地面に垂らし、別々に動く真っ赤に血走った4つの瞳で辺りを見回す。  人ではないことは歴然だが、普通の生物とも思えないおぞましいその姿。“それ”はまさしく悪しき魔の怪物……“悪魔”と呼ぶにふさわしい異形だった。 「──天上の火よ、我はその御心を示す者とならん。輪廻に障る咎を重ね、地に伏し血を啜る愚者よ。その救い、魂滅による安息と知れ──」  どこからともなく空に反響した詠唱に気付き、悪魔は目に見えて殺気立つ。  そして解き放たれた膨大な魔力の光が術式を組みあげ、空中に巨大な魔法陣が完成する。 「──ヘブンズ・レイ!!」  澄んだ高い声が空に響く。  その声と同時に魔法陣から凄まじい光があふれ、悪魔を飲み込んで爆発する。  両耳を貫くような鋭い音が響き渡り、少しだけ遅れてやってきた衝撃波が周りの巨大な岩を吹き飛ばす。  
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