黒獅子の王 1章

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       * * *  ここから見えるのは赤土のレンガで造られた家々、灰色の粘土を固めて造られた家々。  ここはあまり統一の無い田舎街を一望できる小高い丘。青い芝が生い茂り、優しい温かさの風が頬を撫でる木陰に一人の青年が寝転がっていた。  無造作に散らばった紺色の髪、整った顔立ちに澄んだ青い瞳、冒険者のような動きやすい服装。  そして一本の黒い大剣がベルトごと外して横に置いてあった。 「ふあ、眠い」  この辺には質の悪いゴロツキもいるというのに無防備、青年は情けない顔をしてあくびした。  小鳥がさえずり、草と土の香りと共に風が髪を揺らす。 「ん~、眠いが腹が減ったな」  青年がそんな独り言を呟いた時だった。  ザリザリ……と音を立てて近付いてくる人の気配を感じ、青年は閉じていた瞼を開いて鋭い視線をチラリと後方に向けた。  そしてかなり近付いたことがわかるほど大きな足音は止まり、鉄臭い匂いが風と共に流れてくる。  
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