序章<prolog>

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   血走った眼をギラつかせた双頭の悪魔が、そこに傷一つ見当たらない姿で健在していた。 「なっ、あ、まだ生きてる!?」 「気を抜かない、ローランド!! これは普通の悪魔じゃない!!」 「ええっ!?」  双頭が地面に向かって吠える。  その轟音は地面と空気を激しく揺らし、周りに潜んでいた魔術師達の平衡感覚を狂わせる。 「くっ──其は裁き、邪を……」 「──其は裁き、邪を穿<ウガ>つ矛、大罪を屠<ホフ>る焔。苦痛と共に、悔いる間を与ふべきか──フレイム・ジャベリン!!」  動揺するローランドと呼ばれた男の詠唱をかき消すように、隊長と呼ばれたアリシアが素早く詠唱を終える。  幾つも重なった魔法陣が空中に浮かび上がり、そこから巨大な炎の槍が飛び出して空へ上がる。  そしてその無数の炎槍は重力に従い、魔術師達に迫る魔神に降り注ぐ。  
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