序章<prolog>

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  『ガァァアアアッ!!!!!!』  紅蓮の爆炎が立ち上ぼり、この世のものとは思えない絶叫が辺りに響き渡る。爆炎と爆煙が入り交じり、視界を覆い尽くしてしまう。 「やった!!」  しかし無情にも、撃破を確信した魔導師の期待は踏みにじられる。 (いや、これは……まさかっ)  大気を震わせる恐ろしい咆哮によって炎と煙が吹き飛び、その怪物のような巨体が目の前に姿を現す。 「そ、そんなっ!! 隊長の上級魔法<ハイ・スペル>を二撃も受けて、無傷だなんて……」 「……“魔神”だわ」  アリシアが呟いた言葉にローランドが青ざめる。  魔神、それは悪魔を越える悪魔の呼称。 「……“双頭”のビフロングス。流石は第二階級<アエリア>の悪魔、26の軍団を率いる魔神というわけね」  再び吠えた巨大な魔神の咆哮と共に地響きが起こる。その背後に浮かぶ黒と異様な奇声、おびただしい蠢<ウゴメ>く黒が突如として現れる。  己が持つ配下悪魔、ビフロングスの眷属・総勢数万の人外の軍勢を現世に召喚したのだ。  
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