僕はこの瞳で嘘をつく

4/4
前へ
/13ページ
次へ
「なんだぁ?おめぇこんなトコで何やってんだぁ?」 茂みを掻き分けて現れたモノ…… 身の丈は今のアベルの倍はゆうにありそうだ。 丸太の様に太い腕には、これまた太い樫のこん棒が握られている。 足は短く蹄がある。 ぽっこりと出たお腹から更に視線を上げると……つぶらな瞳に大きな鼻。 まあ、簡単に言うとそれは豚そっくりな顔であった。 「オークか……」 そう呟くとアベルは今までそうしてきたように腰に手をやる。そして一気に抜刀しようとした所である事に気づく。 「け、剣がない……」 頬に汗を垂らしながら自分の腰を見つめ、再び自分の現状を理解したアベル。 (まずい、剣も無しでどーやってコイツを倒すんだ。 パンチか?いや、こんな可愛い手で殴ってもダメージ無いだろ。やばいぞ俺。 どーするどーする。 よし、……とりあえず謝ろう) 「あの……」 「さっさと行かねぇと集会に間に合わねえぞ?」 「……は?」 「ほれ、はよ行くぞ」 それだけ言うとオークは、踵を返して向こうへどんどん歩いて行ってしまう。 それをボーっと見つめていたら、途中でいきなりこちらに振り返った。 「何やってんだオメェは!早く来いったら!」 大きな手でこちらに手招きしているオーク。 どうやら着いて行かなければならないらしい。 「悪いヤツじゃなさそうだし……ま、なるようになる、か」 ため息をついてアベルは、自分を待つオークの元へと駆け出した。 こうして二人は「集会」とやらが行われる場所に向けて歩を進めるのであった。
/13ページ

最初のコメントを投稿しよう!

5人が本棚に入れています
本棚に追加