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「なんだぁ?おめぇこんなトコで何やってんだぁ?」
茂みを掻き分けて現れたモノ……
身の丈は今のアベルの倍はゆうにありそうだ。
丸太の様に太い腕には、これまた太い樫のこん棒が握られている。
足は短く蹄がある。
ぽっこりと出たお腹から更に視線を上げると……つぶらな瞳に大きな鼻。
まあ、簡単に言うとそれは豚そっくりな顔であった。
「オークか……」
そう呟くとアベルは今までそうしてきたように腰に手をやる。そして一気に抜刀しようとした所である事に気づく。
「け、剣がない……」
頬に汗を垂らしながら自分の腰を見つめ、再び自分の現状を理解したアベル。
(まずい、剣も無しでどーやってコイツを倒すんだ。
パンチか?いや、こんな可愛い手で殴ってもダメージ無いだろ。やばいぞ俺。
どーするどーする。
よし、……とりあえず謝ろう)
「あの……」
「さっさと行かねぇと集会に間に合わねえぞ?」
「……は?」
「ほれ、はよ行くぞ」
それだけ言うとオークは、踵を返して向こうへどんどん歩いて行ってしまう。
それをボーっと見つめていたら、途中でいきなりこちらに振り返った。
「何やってんだオメェは!早く来いったら!」
大きな手でこちらに手招きしているオーク。
どうやら着いて行かなければならないらしい。
「悪いヤツじゃなさそうだし……ま、なるようになる、か」
ため息をついてアベルは、自分を待つオークの元へと駆け出した。
こうして二人は「集会」とやらが行われる場所に向けて歩を進めるのであった。
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