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魔物になってしまったアベルとオークはある場所に向かって森の中をひたすら歩いていた。
「あのさ、……えーと……」
「ぬ、自己紹介がまだだったな。わしはオークのバルボだ。よろしくな」
何かを言いかけたアベルに大きな手で握手を求めるバルボ。
「あ、よろしく。俺はアベル」
「……アァァベェルゥゥだとおっ?」
アベルの名を聞いた途端バルボの表情が急変した。
表情だけではなく体全体から魔物特有のオーラが吹き出す。
さっきまでの穏やかなバルボとは別人のようだ。
「きぃさぁまぁ……我等魔物の敵である勇者の名前と同じとはどういう事だぁぁ!!」
バルボの手にどんどん力が入りはじめ、握られているアベルの手が悲鳴を上げはじめる。
「ちょ、いたいいたいイタイ!折れる!てか砕ける!タンマ!タイムアウト!」
(要はアベルって名前がこちらのオーク様の逆鱗に触れちゃった訳か!!えーと偽の名前、偽の名前……)
アベルは激痛で意識がぶっ飛びそうな中で必死に名前を考える……そして。
「ま、待って!!俺は、いや僕は江戸川コナ……じゃなかったアベベ!!そう、グレムリンのアベベです!」
「……アベベ?アベルじゃないのか?」
一瞬考える仕種をみせたバルボだったが、必死で首を縦に振るアベルを見てすぐに手を離してくれた。
そして肩をバシバシ叩く。
「いやースマンかった!!アベルの名を聞くと頭に血が上っちまうんだよ、痛かったか?」
ガハハとは笑いながら自分を叩いてくるオークにアベル、いやアベベは軽く殺意を覚えたが、今は耐える事に決めた。
「ところでバルボ。集会って一体何が始まるんだ?」
体をさすりながらさっきから感じていた疑問を口にする。
「……オメェ本当に知らねぇのか?魔界中の魔物達に知らせが行ってる筈なんだけどなぁ」
「あー、ホラ。えと、俺怪我してずっと眠ってたからそれでじゃないかな?」
我ながら苦しい言い訳だとは思ったが他には思い付かなかったから仕方ない。
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