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「受けてみろ!白鳳翔炎斬!」
叫びと共に青年が剣を振り下ろすと前方の空間が振動し、次の瞬間には白い炎が発生し唸りを上げて猛スピードで突き進む。
「甘いわ!ぬぅぅん!!」
炎が標的を捕らえたかに見えたが、相手の気合いと共に振り抜かれた腕によってはじかれてしまう。
「何っ!そんな……俺達が世界を旅してようやく探し出した伝説の剣聖ジークの元で厳しい修行を積んだ末についに編み出した俺の必殺技がいとも簡単に破られるだなんて……へへっ、流石だなあ魔王さんよ!燃えてきたぜ!!」
技を放った青年は驚愕の表情を浮かべながらも嬉しそうに笑う。
金の髪をかきあげると手にしている剣をしっかりと握り直す。
彼こそが「勇者アベル」
端正な顔立ち、体には熱い正義の心を宿した人類の希望。
「……何だその長ったらしい説明口調は」
半ば呆れながらそう呟いた、アベルに対峙している男……漆黒のローブに銀の長髪。女性と見間違いそうな美貌の持ち主だが、その瞳は氷のように冷たい。
彼こそが「魔王ゼツ」
最強の力を持つ魔界の支配者。
「あ、気にしないで下さい。
ウチのリーダーってちょっとイタイんで」
「そうだな。毎回毎回聞く身にもなれって感じだよ」
真っ白なローブに身を包んだ黒髪の少女と、燃えるような紅い髪に重厚な鎧を身につけた青年が初めて口を開く。
「そうか、君達も苦労してるんだな……」
ゼツは何かを悟ったように二人を見つめ、うんうんと頷きながら憐れみの表情を浮かべる。
「ちょ待てえぇ!!おかしいだろ!なんでリーダーがそんな風に言われるの?」
三人は騒ぎ立てるアベルをアホの子を見る目で一瞥してから、すぐさま互いに睨み合う。
「折角私達の苦労を分かってくれる方に出会えたのに……残念です。
行きますよ、ルガン」
「あぁ全くだなエレナ。アンタが敵なのが残念だよ」
言い終わるとルガンは手にした両刃の斧を構え、エレナは魔術の詠唱を始める。
「所詮我等は魔物とヒト。
解り合う事など出来ぬ……か。ならば来るがいい!!
全力で相手をさせてもらう!」
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