始まりはいつも雨

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アベルの気合いに応えるかのようにその身を包む光は、更に輝きを増す。 同時にアベルは力強く地面を蹴ると、一直線にゼツへ襲い掛かる。その姿、まさに疾風迅雷。 一瞬でゼツの目の前へと移動したアベルは標的を両断すべく刃を振り下ろす。 が、それに合わせるかのようにゼツの掌が突き出されたかと思った次の瞬間。 黒い炎がアベルの眼前に現れ、彼の身を焼き付くさんと向かってくる。 「ちいぃっ!」 黒炎が放つ熱に顔をしかめながら、舌打ちを一つしたアベルは手にした剣を渾身の力で横薙ぎにする。 風切り音がした後に黒炎は真っ二つに裂かれ、爆発音と共に消滅していった事を確認してから視線を先に向ける。 先程より距離の離れた場所に立つ魔王を見つけたアベルは、 先より険しい表情で突進を開始する。 「流石だ。だが、もっと私を楽しませてくれるんだろう?」 「この野郎……ナメんじゃねぇぇっ!!」 ……そこからの戦いは熾烈を極めるものであった。 詠唱を一切せずに高等魔術を絶え間無く放つ魔王ゼツ。 一方アベルは人を遥かに超えた力を用いてそれらを紙一重にかわしていく。 一瞬の隙をついてアベルの斬撃が決まれば、すぐさまゼツの魔術がアベルを吹き飛ばす。 ……一進一退の攻防が繰り広げられ、それは永遠に続くのではないかと思える程だった。 が、いかなる物事にも永遠は存在しない。 戦いは確実に終焉の時を迎えようとしていた……
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