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「好き」
二人の声が重なる。
私は面食らって
彼の顔を見つめた。
彼もまた同じように
私を見つめる。
「………」
「………」
彼の崩れる事のない
ポーカーフェイス…
鏡のように無表情な私。
どちらからというワケでもなく
自然に手を握り合い私達は
一度、唇を重ねた。
「………」
「……帰るか」
「…うん」
そして二人は手を繋いだまま
帰路を歩いた。
「…」
「…」
いつもと違った沈黙が少し
息苦しくてそれでいて
心地よかった。
夏の風が髪を揺らす。
私達は足を止めて
また唇を重ねる。
彼の右手は少し汗ばんでいた。
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