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━━ふと、風が止んだ気がした。
「久しぶりね」
背後から、聞きなれた声。
俺の知っている無邪気な彼女の声は、明るくて幼いかんじだった。
それが今では、大人びたような静な声だった。
それでも、間違えるはずがない。
「あぁ。久しぶりだな、愛花」
あくまでも平静を保ち、余裕を見せる。
「久しぶりに会ったのに、もっと喜んでよ」
無邪気なふりをする彼女を見て、明らかにおかしいと思った。
「…浩輔は?」
「……」
長い沈黙。
少なくとも、近くにいないことだけは読み取れた。
「一緒に……きて」
絞り出したような声に、一瞬ドキッとしてしまったが、深刻な話だと気付いた。
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